泡沫 手嶋純
家出したあなたは、
ホームで震えたまま、
何度も、何度も、
リップスティックを塗る。
酔ったサラリーマンが、
あなたの顔を覗き込み、
何度も、何度も、
うすら笑う。
電車が滑りこむ、
あなたは涙を浮かべ、
何度も、何度も、
冬の月を恨む。
孤独な夜は、
あなたを鞭打つ、
何度も、何度も、
あなたは家族を罵る。
愛は蜃気楼だ!
頻繁に現われては、
何度も、何度も、
甘い罠を仕掛ける。
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