深夜の棲息地 手嶋純
日曜の夜は、
若いカップルが、
消えてゆくたびに、
孤独を連れて来る。
鳴りやまぬ
救急車のサイレンが、
冬空に響きわたる。
キーボードに触れるたびに、
一年の終わりを惜しむ。
あの人は幸せになった!
あの人は不幸になった!
そして私は、衰えてゆく!
肌を気にしながら、
ヨドバシで買ったi-podで、
ヒッキーを聴き続ける。
苦いコーヒーが、
風邪で痛む喉を、
容赦なく刺激する。
闇が迫るごとに、
人は家へ戻る。
気まぐれな木枯しが、
キャバクラのチラシを、
ビル街に舞い上げる。
深夜客で溢れた
ネットカフェに私は棲む。
新たな生き物が蠢く
フロアには欲望が満ちる。
夜はとぐろを巻いては、
弱者の魂を奪い去る。
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