潮騒 手嶋純
波に洗われた
砂を掌にすくいとり、
潮の香りにひたる。
懐かしい故郷を、
記憶からよびもどし、
私は時を旅する。
冬の太陽は、
まだ水平線上、
孤独感が迫る。
海のメロディーは、
優しく耳になじみ、
戸惑いを断ち切る。
地球に生まれたものは、
いつの日にか、
海へと還る。
私の心は、
オレンジ色に染まり、
海と同化する。
許しを求めず、
あなたに抱かれ、
少女のように眠る。
短く切り揃えた髪が、
乳房まで伸びたとき、
あなたの瞳が光る。
海は、
幼い私を、
一人の女にする。
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