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   台風の後    森下かほる

 

 

台風がすべての雲を引き連れて

通り過ぎた後

真っ青な空には

夏の太陽が輝いている

 

台風の忘れ物の風が

スカートの裾を翻して

迷子になった事に

まだ気づいてない子猫のように

はしゃいでいた

 

何事も無かったような

あまりに青い空

それとは対照的な

台風が残した爪跡

 

時は日常に戻り

台風の被害も人々にとって

過去の記憶となっていくのだ

 

でもそこで時を止めたまま

身動き出来ずにいる人もいる

きっとニュースで流れた

被害にあった人の名

その人そしてその周りの人々は

普通に時が流れ出すまで

どのくらいかかるのでしょう

 

迷子の子猫のようにじゃれる

台風の忘れ物の風に

大切なものを失った人の横で

何を囁いたのか教えてほしかった