スケート 森下かほる
「もう手を離しても大丈夫だよ 一人で滑ってごらん」
あなたはそう言ったのに 怖くて手を離すことが出来なかった あの頃の私
十何年ぶりに履いた スケート靴 今はもう私の隣に あなたはいない
あの頃と何も変わらない リンクに立って フェンスから手を離せずにいた私 何故かあなたの声が聞こえた 「手を離してごらん! 滑れるから」
見えないあなたの手に引かれて 滑り出した私 忘れていたはずなのに 自然とバランスをとっていた
あの頃と何も変わらない リンクを滑りながら やっとあなたの手を 離せそうな気がした
|