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茶色の人   てるり

 

忘れ去られて変色したデパートの前の階段

そこに彼はいた

同じ色をして

座って現代風に誰かに電話をしていた

誰も彼に気付かず彼を見つめず

彼はただ寂しかったのかもしれない

自分を浮きあげる色をもっていないことが

近くでは恋人たちが甘いものを食べている

近くではお父さん世代が夕食を済ませていて

にぎやかなのに

彼の居場所は音がしなかった

寂しかったのかもしれない

自分に誰も声をかけてくれなかったことが

いまいてもいなくても誰にもわからない