遠い日の記憶

 〜心の中で眠ったままでも〜   森下かほる

 

 

胸のずっと深い所に

眠る記憶

もう思い出すことを

忘れてしまった

静かに静かに

眠り続ける

心の森の奥深くで

霧のベールに包まれて

 

その霧のベールは目から

零れることが出来なかった涙

出口を見つけられずに

忘れたくない記憶を包み込んだ

 

時間が少しずつ重なって

霧のベールは幾重にも重なって

包まれたものが

なんだったのかさえ見えなくなって

ただやわらかい優しい感触だけが残る

 

それは懐かしさというのだろうか?

もう思い出せないくらい遠い昔のやさしい記憶

ほんの少しだけ寂しさが心をよぎる

 

想い出は背を向けるものではなくて

心の中でやさしさを育むもの

例え心の痛みを伴ったとしても